お客様はお客様 / Let’s get Americanized!
お金を払うことに対する価値観
日本では会社間取引でも個人間取引でもお金を払う側がサービス、商品を提供する側よりも強い傾向にあります。そのためクレーマーや最近ではカスタマーハラスメントなどと言われたりする人たちが今だに根強くいます。
欧米では全ての取引はtradeであり、両者が納得してfair(公平)な状態で取引が成立する価値観であるため、お金を払う側が偉いという感覚はありません。そのため日本と同じようにお客さんの態度が悪い場合、サービス拒否や入店拒否などが頻繁にあります。
払うお金=サービス、商品の価値
お店などではお金をサービスまたは商品とtradeする感覚が根付いているため、値段の交渉をすることなどはあっても、店員をリスペクトするのが自然にできています。とはいっても全ての店員が好印象なわけではなく、無愛想であったり仕事が丁寧でない店員もいたりします。そういった場合、日本では店長を呼んでクレームというようなことになりがちですが、欧米ではそれはその個人の問題であって、その人との取引が行われないだけということで解決します。店員側も態度が悪ければtradeができなく売上があげられないので必然的にお客さんに寄り添った態度になります。
この背景にはチップ文化にも似たような成果主義的要素が関係しています。日本では一人の店員がどんなに売上をあげようが利益は会社が持っていくというような構図のため、店員のモチベーションが上がらないなどの問題がある中で、お店は店員にお客様を神様のように扱うようにすることが仕事と植え付け、それによりお店の売上が増えるということがこれまで行われてきました。間に入っている店員からしてみると全くフェアではありません。
本来はサービス、商品に対して対価をもらうことが取引なのですが、お客さんを気持ちよくさせるために奉仕することが対価に含まれてしまい、それに対して給料が支払われるという歪んだ構造ができてしまうからです。
雇用の流動性との関係性
この問題には最近日本でも言われるようになった雇用の流動性との関わりもあります。日本の店員はどんなに売上をあげようが、その会社の社員であり、給料の変動はそれほどはありません。また転職したくてもマイナスな印象ができてしまうのと優秀な人材に投資するという環境が整っていないため会社を変えるという選択肢が限りなく少ない状況です。いっぽう欧米では結果を残せる人材はどこの会社も必要とするため転職しやすい環境が出来上がっています。優秀な人材を引き止めるにはそれなりの見返りを払わないといけないというここでもフェアなtradeが出来上がっています。
この結果、優秀な人材は高い報酬を求めてよりよい会社のために働き、その会社は売上をあげるという好循環が生まれます。日本では頑張っても報われないという優秀な人材を腐らせてしまうような環境が蔓延っています。これが日本の経済が30年以上も停滞している根本にある原因なのではないかと思います。
アンケート結果
興味を引くアンケート結果として、女性が苦手な男性のタイプに、店員に対して偉そうな人という結果があります。これは男性優位であった日本社会で、女性が意見を言えるようになってきたことによって本音が聞こえるようになったことと、女性の前で店員に偉そうな態度をとる男性が今だに多くいることを表しています。女性はこれまでも本能的にそういう人は嫌だと感じていながらも、日本の社会自体がそういうものであったため意見として出していなかっただけであって、人に対してお金をバックに圧力をかける行為は決して美しい行為ではないことを表しています。
お客さん側に不満がある場合はお店に対して苦情を言うこともあります。とはいっても苦情は論理的でなければなりません。苦情が論理的に正しい場合はお店側は謝罪をし、支払われた金額に対する正しいものを提供します。ミスや失敗はどこでも起こり得るものなのでそれに対してプラスで何かを補償してほしいというような要求は聞かれません。苦情が論理的ではない場合はお店側はその要求に応えることもありません。声を荒げて脅すような態度をすれば、お店を出るように警告され、従わない場合は警察を呼ぶというような断固とした姿勢を表します。
カスタマーサービス
電話などのカスタマーサービスでも、お客さん側が感情的になって対応者を侮辱したり声を荒げたりした場合は、”あなたは感情的なのでお電話を切らせていただきます”と言って電話を切るようなこともあります。このようなケースでは、たとえもう一度電話してその上司と話をしても、それは仕方がないですねと言われ門前払いになります。苦情が非論理的である場合、会社側も正当性を主張しますので、勝ち目がなくなります。逆にお客さん側に正当性がある場合は裁判になり、会社側は裁判で負ければその対価を支払わなければいけなくなりますが、裁判では論理的な正当性が争われるため、気に入らないなどの理由で感情的になっているお客さん側には勝ち目がありません。
まとめ
このように、働く側とお客さん側双方がフェアであるかというポイントを交渉することが取引であるというのが欧米の価値観であり、社会もその価値観をサポートしています。日本はお客様は神様です的な価値観がまだまだ根強いですが、少しずつお客様はお客様ですという価値観も出始めてきているように感じることもありますので、これからどんどんアップデートされることを願っています。
Writer:James
アメリカ在住約10年を経て日本に帰国。アメリカ、イギリスでの豊富な経験をもとに帰国後は多方面で活動。純日本人ながらアメリカの黒人文化に囲まれて過ごすという異例の経験を持つ
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